2012年10月1日月曜日

「視覚障がい者の外出の自立を応援する」

*ユニバーサルデザイン研修会―
「視覚障がい者の外出の自立を応援する」
兵庫県立福祉のまちづくり研究所  研究員趙玟姃(ちょう・みんじょん)氏




日 時 : 2012年 8月11日(土)午後1時半~3時半
会 場 : 神戸市勤労会館
主 催 : 女性委員会・ユニバーサルデザイン建築研究会
参加者: 17名






 視覚障がい者の方々は、在宅身体障がい者手帳保有者の9%弱(約31万人)だそうですが、その70%の方々が60歳以上の高齢者であり、先天性の方より、後天的な原因で発症される方々が多く、失明状態も全盲者が2割弱、弱視者が8割強を占めるそうです。障がいの原因もわからないことが多く、超高齢化社会に向かっている現在、障がい者手帳を保持していない隠れた多くの対象者もいると思われます。

 物が見えにくい方や見えない方が自立的な外出ができるためには、どのように空間を認知し情報を得て行動をしているかという趙先生の研究から、点字ブロックや音響式信号機などによる情報の入手や通いなれた場所での自分で決めた手がかり(たとえば音・匂い・縁石や柵等の手がかりとなるもの)や盲導犬や介助者等による補助等から空間を認知することや、買い物では売り場の人からの声掛けを受けることで情報を得、出かけやすい環境となっていることを知りました。また、移動するときの目安に色彩や明暗のコントラストも大切で、黄色であまり美しいと思えない点字ブロックもロービジョンの人にとってはアスファルトに黄色(黄色が最善ということではないけれど)のコントラストは分かりやすく、移動の大事な指標になるという事でした。

 このようなバリアフリー環境の整備もさることながら、休憩できる場所が大事で、白杖や音・匂いなどの手がかりに神経を使った行動は非常にストレスが高く、そのストレス緩和には、体力を戻すことができる小刻みな休憩が必要なのだそうです。高齢者と同じようにベンチやいす等のある休憩空間があれば行動しやすくなる条件は同じで、皆が出かけたくなる心地よい街の整備が求められていることを確認しました。

 高齢になれば視力も衰え潜在的視覚障がい者へと近づいていくわけですから、将来の自分も含めて視覚障がい者対応だけでなく高齢者や複合障がいなど多様な状態にある方々に対して、総合的視点に立ったユニバーサルデザインで解決していく環境整備が大事であり、複眼的なものの見方が大切だという事を、改めて再確認できた研修会でした。